おうちこ・2






「な、あ・・・せめて場所・・・んっ」


ぐり、と胸の尖りを弾かれて声が漏れてしまう。


「もう待てない」

「・・・」


政宗は目を丸くさせた。

口付けをするのも身体を繋げるのも、いつも小十郎のペースに任せてはいたが、あくまでもリードしてコトを進めてくれているだけで、自分の欲望を満たすだけの行動ではない。

勿論欲情している時などは態度でそれとわかるといえばわかるが、口にだして言うかどうかは大きな違いだ。


「繋がりてぇ・・・」

「!」


瞳を覗き込むようにして伝えられた言葉に心臓が跳ね上がった。


「機嫌とってんじゃねぇ・・・」


とっくにでてしまっている獣の耳はピクピクとしながら後ろに倒れてしまっている。

顔を反らして不貞腐れた声をあげると、そっと頬が撫でられた。


「なんでこれがご機嫌とりだと思うんだ?」

「・・・そうやって・・・、俺の事を喜ばせようとしてるんだろ・・・」


言葉に詰まって小十郎をみやれば、ほのかに笑ったその瞳の奥には本当に熱が宿っている。


「・・・っ」

「こうやって政宗を求めてもなんの咎にもならない」

「・・・?」

「昔の俺は想いを口にする事も赦されなかった。この腕に抱きしめることも、髪に触れることも」

「こじゅうろ・・・」


いつか話してくれた、ただ一度だけ夢で見たという昔の事を言っているのだろう。

嫉妬心を腹の中に押し込め、どす黒い感情に飲み込まれそうになる事があっても、忠義を誓い唯一の半身として生きたと聞いた。


昔の自分達に思いを馳せていると、いつの間にか外されていた眼帯の下の右目に、小十郎がそっと口付けてくる。

何度も優しく落とされる唇に、瞼がじわりと温かになった。


「こうして触れられる事がどんなに幸せなのか気付かされた。・・・それなのに」

「・・・なのに、なんだ?」

「満たされてはいねぇ。いつも、政宗を渇望しちまう」

「・・・・・・」


小十郎の言葉に目を丸くしたが、すぐに満足気な顔で笑ってみせた。


「上等・・・!」


負けじと噛み付くようにキスを仕掛ける。

するとすぐに小十郎の腕が後頭部にまわり、深く深く口付けあう。


互いに息遣いが荒くなれば、それがますます熱を生み出す結果となり、どちらからともなく衣服に手をかけた。

纏っているものがうっとうしくて、早くその素肌に触れたくて、乱暴に脱ぎ捨てる。


「覚悟はできてるか?って言ったな?」

「ああ」


政宗が挑むような顔で問えば、少し疑問符の浮かんだ顔で続きを促してくる。


「俺はできてるぜ」


小十郎の声音を真似するように言ってみたら、ふ、と吹き出して、身体に這わせていた手の動きが止まった。

その隙をつくようにして、小十郎の身体に手を這わせ返す。


「っ・・・?」


驚いた様子を肌で感じながら、その逞しい胸元をさすさすと撫で上げてみる。


「くすぐったいぞ」


呆れるような困ったような声音にカチンときたので、思い切って片方の尖りを口に含んでみた。


「ま・・・っ、やめろ、政宗」

「気持ちいいか?小十郎?」

「いや、そこ自体がいいとかはないが・・・」


それを聞いて、つい“なんで?”という顔をしてしまい、はっと我に返る。

男なのだからそこを弄られたって快感などわかないのが普通だろう。

けれど政宗は小十郎に触れられると、普段眠っている快感がざわつくのだ。


「政宗はここも気持ちいいんだろ?だったらいつも通り・・・」


形勢が逆転されそうになるのを感じて、慌てて抵抗する。


「Stop! お前は見てろ。手ぇ出すんじゃねえぞ?」

「・・・」


なぜか心配そうな顔をされるが、見ないフリをして下着越しに小十郎の熱に触れた。


「・・・・・・」

「なんだ、お前もここで感じたのか?」


胸の尖りを摘んでニヤリと笑ってからかうと、盛大な溜息をつかれた。


「そこがどうという事じゃねぇが、政宗が・・・俺に仕掛けてくる姿を見てるだけで高ぶりやがる」

「!・・・Ha、我慢しとけよ?今日は俺がするんだからな!」


熱をさすりながら見上げると、いよいよ焦りの色が滲んでいた。


「する、ってなんだ。まさかとは思うが・・・最後まで、する気なのか?」

「ああ、それもいいかって思ってるな」

「良くないだろう」

「なんでだ」

「政宗が俺の事を組み敷くというのは、その、違和感がないか・・・?」

「別に」


本当はそこまで考えてはいなかったのだが、小十郎が焦る姿が新鮮で、面白くなって話をあわせる。


下着の合わせ目から無理矢理小十郎の欲を外気に晒すと、チロリと舌を這わせた。

じわりと苦味が口に広がり、先走りの雫に濡れていた事に気がつく。


息を飲む気配に気をよくして、ねっとりと舐め始めた。

自分のものとは様子の違う小十郎のソレは、男らしくそしてどこか獣のようで、知らず喉が鳴る。




2