あまりの衝撃に固まっていた小十郎も、じりじりとそれを握り締めて近づいてくる政宗にはっと我に返った。
「小十郎は結構で御座います!」
「Ah〜?何言ってんだよ。奇病のせいで小十郎が完治しなかったら一大事だぞ?」
「・・・恐れ多くも言わせて頂きますが、それは気休め程度のものでしょう、小十郎には必要ありませぬ」
「おめぇ・・・気休め程度って思っておきながら俺にしたってぇのか?」
小十郎が病の願掛けだと信じ込んでいるからこそ、屈辱も受け入れて尾を尻に刺したというのに。
政宗の顔が険しくなっていく。
「いえ、その。政宗様においては、気休めだとしても万が一の可能性も考慮し」
「だったらお前も万が一の可能性を考慮して差し込んでみせろよ!」
褌を掴んでとりあげようとしてくる政宗の腕と、そうはさせまいと必死にその腕を掴み動きを封じようとする小十郎の腕と。
互いに、ぎりぎり、と睨みあっていた。
「だいたい、俺のこの耳もそうですが、気色悪いでしょう」
「まだ言ってんのか?Cuteだって言ってんじゃねぇか」
「ですから、俺が“きゅうと”ってのは似合わないって事です!ましてこれにそんな尾を突っ込んだ姿を見たいと仰せか?」
「見たい!」
「勘弁していただきたい!!」
両者一歩も譲らず、力の込めすぎで筋肉がビリビリと痙攣する。
「それに、小十郎は尻に物を突っ込んだことはございませんので・・・」
力任せに言い合ってもキリがないとの判断からか、小十郎は、ふと目を反らしてしおらしい声で言ってきた。
恐らく、慣れない行為に暴れて、政宗に怪我をさせたりといった粗相をしてしまうかもしれないからという事を伝えようとしているのだろうが、政宗の頭の中では全く違う妄想が広がっていく。
「Oh・・・そうか、初めてなのに物を突っ込むなんて、ひでぇよな・・・」
ふ、と腕の力が緩み、無理矢理小十郎の褌を脱がせようとしていた動きを止めた。
「・・・政宗様?」
雲行きの怪しさを感じ取って、おずおずと声をかける。
「じゃあ、俺の、いれてみるか?」
「!!!」
もう一度、血の気の引く音が聞こえるようだ。
「何故そうなるのですか・・・」
「delicacyがなかったぜ。すまねえ」
「いえ、そもそもですね・・・」
油断した小十郎のモノに、ぐいぐい、と手で触れてくる。
「ま、さむね様!」
「お前にいつもされてるみたいにすればいいんだろ?」
意に反して、擦られる事で欲望が勃ち上がってきてしまい、小十郎はじわじわと焦りを感じる。
「ほら、善いんだろ?今日は、俺がシてやるよ」
「結構です」
はあ、と溜息とともに返事する。
「なんだよ?俺には散々突っ込んでるくせにお前は嫌なのかよ?」
「そういう言い方は政宗様らしくありませんぞ!それにそういう事ではありません!」
ついでに言えば、そんなに“散々”などと言われる程数多く抱いたわけではない、と心の中で叫んでいた。
「じゃあどういう事だよ?」
布越しにも大きく反り勃った小十郎自身を、形を確かめるかのように上下に動かす。
「政宗様!おやめください・・・」
制止の言葉は聞かずに、布を寄せて腫れ上がったモノを取り出した。
小十郎のモノを間近で見るのは初めてで、あまりの獰猛な様に、思わず口をあけて唖然とする。
うっすら浮かび上がる血管は、鼓動すらきこえてきそうな程で、猛々しい。
そして、ひどく、熱い。
「・・・」
声も出せずに凝視している政宗の頭に手をやり、黒猫の耳や髪を優しく撫でてやる。
「この身体の中に入れたいなんて、思わないでしょう?」
もしする側に興味がおありなのであれば、もう少し華奢な小姓を・・・と言う声も遠くに聞きながら、政宗の注目は、その猛々しいものの更に下の方に集中していった。
影を落として見えないが、そこにあるであろう入口。
普段自分が小十郎を受け入れる場所。
―――小十郎の体内に、入る?
そこまで考えて、内側から息が荒くなる感覚がして、少なからず興奮している事に気がつく。
「入ってみてぇ、かも」
「・・・は?」
政宗は色々と想像をして頬を紅潮させると、うっとりとした顔つきで小十郎を見詰めてきた。
「政宗様、なにも俺のような年の離れた男の尻でなくても・・・」
「うるせぇ、年の事ばかり言いやがって。俺が性欲だけで閨事してると思ってんのかよ!」
「・・・!政宗様」
いつもならば曖昧に誤魔化して、肝心の本心までは預けずに身体を重ねていたというのに、つい口が滑って告白じみた事を言ってしまった。
「政宗様・・・」
小十郎が優しく肩を抱いて猫の耳に口付けをしてきた。
聴覚は備わっていなくとも、触れられている感覚はあるのでびくりとしてしまう。
「な、なあ小十郎、入れてみてもいいか?」
熱に浮かされた子供のように純粋な目で淫らなおねだりをしてくる政宗に、とうとう小十郎は説得を諦め別の方法にでた。
「小十郎に貴方様を拒むことなど出来ませぬが、政宗様はこちらに欲しくはありませんか?」
そう言って、くい、と白濁を塗りつけた指を、油断していた政宗の蕾に深々と突きたてた。
「ぅ、あ・・・っん」
達して弛緩していた身体は抵抗なく指を飲み込んで、すぐに小十郎の動きに翻弄される。
「政宗様、どちらが宜しいですか?」
穏やかに問いかけつつも、性急に政宗の感じる場所を集中的にこすり続ける。
「あ、ああ、ん、おま、え、卑怯だ、ぞ」
「相手の弱いところを突くのは戦術の基本ですぞ」
「ふ・・・っぁ・・・っ」
政宗が快楽に無理矢理染められそうな頭で、小十郎の問いを反芻する。
どちらが良いか、と。
確かに小十郎の身体に入ってみたい、と思ったが、圧倒的な快楽で、入ってきてほしいという気持ちに塗りつぶされていた。
「も、いい、お前のいれろ、よ」
「もう少し慣らしませんと・・・」
「早く・・・っしろ」
強すぎる快楽に酔ってしまい、政宗は半ば本当の酔っ払いのように、す、と足を広げて誘ってみせる。
「政宗様・・・」
小十郎の瞳の奥に、欲望の光がちらつく。
白く長い足を大胆に広げて息も絶え絶えに睨んでくる姿は、まさに獣のようで、ごくりと喉をならした。
腰を深く穿った小十郎もまた、獣そのものであった。
そして何度も何度も求め合い、互いに意識をとばすようにして眠りについて、目が覚めた時には身体中が悲鳴をあげるようにぎしぎしと痛んでいた。
「ん・・・こじゅうろ」
「まさ、むねさま・・・」
約束通り小十郎は政宗の部屋で一夜を過ごし、普段ならば寝過ごすことなど有り得ないのだが、昨日の疲れもあってか目が覚めたのは二人とも同じくらいだった。
「Good morning小十郎。お前がまだ寝てるなんて珍しいな」
ちゅ、と頬に口付けをすると、小十郎が、まじまじと政宗の頭を見詰めた。
「政宗様、まだ、耳がついておりますぞ・・・」
「Ah?」
そろりと触ってみると、昨日と変わらず耳はそこに存在していて、ぴくぴく、と動かすこともできた。
「七つの晩は経ったよな?」