夕餉には約束通り、政宗の好物の牛蒡の和え物も並んでいた。
すると、食べ終わった頃合を見計らい、頭巾を被った小十郎がやってくる。
今日は自らが食事の支度をしたせいか、お膳を下げにきたようだ。
「なあ、こじゅうろー」
「なんですか?甘い声をだして」
にこり、と微笑んでくる顔も十分甘い。
「今日は俺の部屋で寝ようぜ」
「・・・そうですね。今日が七つ目の晩。耳がおちる時にはお傍で見守らせていただきます」
その顔は、今までの甘く優しげなものとは少し違う、緊張した面持ちだった。
どうやら、得体のしれない病であるが為に、不測の事態が起きないかと心配をしているようだ。
けれど政宗にとっては、その気持ちも想定した上での計算づくの誘い文句だった。
実は先程、廊下で会った慶次から町に行った土産とやらを貰ったのである。
部屋の箪笥にこっそり隠したそれは、この病になくてはならないという、アレだ。
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夜になり部屋を訪れた小十郎は、入るなり頭巾をすぐに取った。
白く柔らかな耳は最初こそ意外だったが、見慣れると妙に似合うと感じてしまう。
戦場でしか小十郎を見た事がなければ話は別なのだろうが、猛々しい見た目とは裏腹に、野菜を作ったり料理をしたり、笛を奏でるのも超一流の腕前といった二面性の持ち主だ。
特に野菜と兎の組合せなんて、しっくりくる。
やはり本人の何か内面を表す耳が出るというのは、あながち外れてもいないのかもしれない。
「政宗様。お加減はいかがですか?」
「I’m fine!心配すんな」
耳を眺めながらにやついていると、一方の小十郎は神妙にかしこまっていた。
「・・・今晩で見納めですかね」
「あ?そうだな。よく目に焼きつけておけよ?」
からかうように前かがみになり顔を覗きこむと、目の前の小十郎の耳が、ぴくぴく、と揺れた。
共に眠るようになってから、二人きりの時だけは互いに耳を隠さない。
小十郎もいつの間にか、政宗が見る事を拒否しなくなっていた。
自分にだけ耳を見せるという行為は、心の内を見せてくれている事と似ている。
「小十郎、Thanks」
「?何のことでしょうか?」
何でもねぇ、と言いながら、きっちりと正座をしている小十郎に纏わりついた。
「ま、政宗様」
「An?」
いくら奔放な政宗でも、普段ならば前触れもなく身体を寄せる事はない。
病になってから、素直に甘える事への恥ずかしさが消えたせいだ。
ぐ、とおもむろに手を動かす。
「政宗様!」
甘える気持ち半分とからかう気持ち半分で、小十郎の股を触る。
「・・・少し勃ってねえか?」
「!!手をお離しくださいっ」
小十郎が慌てるのはもっともで、無理矢理触れたそこは少し熱をもって形を成していた。
強い力で腕を引き剥がし、その反動で体勢を崩した政宗に覆い被さるような姿勢になってしまう。
「・・・も、申し訳ありません」
すぐに上から退こうとする小十郎に、組み敷かれた状態の政宗がにやりと笑って、首には腕を、腰には足を絡めた。
「Hey、小十郎。お前なんでおっ勃ててやがるんだよ?」
「申し訳・・・」
「Stop!俺は理由を聞いてるんだぜ?」
ぐ、と小十郎が押し黙る。
「・・・政宗様の耳のついた姿を見ておりましたら・・・この前の晩の事を思い出しちまいました」
やがて観念したように、ぽつりぽつりと白状した。
「お前案外、助平だな」
「・・・っ」
満面の笑みで言い放ち、絡めた腕と足に力をこめて身体を密着させるよう促す。
「・・・政宗様も既に腫れてらっしゃる」
はだけた着物のせいで薄い布一枚で熱同士が触れあい、そこが昂っている事がわかる。
そして観念したように、小十郎が政宗の身体を抱きしめた。
「なあ、この病はなかなかいいもんだな」
「気が緩んで、政宗様に近づき過ぎちまうのがどうも・・・」
「お前は普段から距離をあけ過ぎなんだよ。もっとぶつかってこいってんだ」
政宗は、ちゅ、と頬に口付ける。
「そうもいきません。本来ならばこのように触れ合う事自体許されぬこと」
そう言いながらも小十郎の唇は政宗の頬や額、瞼と、次々と口付けを降らせている。
「ん・・・こじゅう、ろ」
くすくすと笑いながら政宗も仕返しというようにその唇に噛み付いた。
「そんなに歯をたてないでください、本当に猫になってしまいますぞ」
小十郎は噛み付いてくる歯さえも舌を這わせて政宗の唇に吸い付く。
「んぅ」
深い口付けの快感に身を捩るようにして、反撃とばかりに熱を悪戯に擦り合わせる。
「っ・・・政宗様は昔から悪戯ばかり上手でいらっしゃる」
すっかり形を成した政宗の熱を、優しく撫で上げた。
「んあ、くすぐってぇよ・・・触るならちゃんとしろ」
「まったくお可愛らしい」
けれど要求に応える気はないようで、布越しにやわやわと袋の部分を揉んでくる。
「おま・・・んっ!」
文句を言おうとすれば、唇を塞がれて熱い舌に蹂躙される。
いつの間にか文句も忘れて舌を絡めることに夢中になってしまう。
その様子に目を細めて、小十郎はようやく唇を離した。
そして下の方に移動すると褌の布越しにぱくりと咥えてくる。
「ふ・・・んんっ!」
布越しでも舌の柔らかさや熱が伝わってきて、腰にじわじわともどかしい快感がわきあがってきた。
そして執拗に、はむはむ、と先端を刺激される。
「こじゅうろっ・・・てめ、いい加減に」
「直接触れて宜しいのですか?」
なにやら意地の悪い笑みを向けてくる。
「だからさっきからそう言って・・・」
「でしたら、褌をずらしてもらっても宜しいですか?」
「!」