するりと衣擦れの音がすると、熱く昂ったものが蕾に宛がわれた。
「ぅ・・・あっ」
焦がれた熱がやっと与えられて、びくびくと身体が震える。
散々弄ばれた入口は解れていて、小十郎自身を飲みこむように咥えこんだ。
「まさ、むね様・・・!」
「あ、あぁ・・・っ」
全て収めたところで動きを止め、息の荒い政宗をなだめるように髪を梳いてくる。
そしてどちらからともなく視線を絡めて、背中越しの口付けを交わした。
ずっと我慢していた唇の触れ合いに、互いの熱がずくりと膨れ上がるのを感じる。
同時に小十郎が突き上げてきて、溢れてくる声を我慢できなくなった。
「や、はあ、・・・んっ、あ、こ、じゅ・・・っ」
「政宗様・・・っ」
びくり、と身体を強張らせたのは小十郎の方だった。
「う・・・」
身体を繋げた事で病が伝染ったのであろう、途端に動きを鈍らせる。
「小十郎。大丈夫か?」
ずるり、と深く突き刺さっていた小十郎自身を引き抜き、身を捩って向かい合わせで顔を覗きこんだ。
「は、い」
頭を押さえるようにして、耳の出てくる鈍痛に耐えている。
不謹慎ながらも、政宗はそこから耳がでてくる瞬間を見逃さぬようにと凝視していた。
「・・・っ」
声にならない叫びとともに、大きな翼のような白い物が現れる。
「・・・翼?」
「え?」
瞬きをして政宗は、その物体を確かめるべく顔を近づける。
小十郎は自分の姿をみる事ができず、政宗の反応を待つばかりだ。
「・・・く、は、はは!」
「?!」
突然笑い出した政宗に、状況がわからない小十郎は羞恥に眉が顰められる。
「こりゃあいい!似合ってるぜ、小十郎!」
今まで散々甘い交わりをしていたというのに、その雰囲気はどこへやら、とうとう腹を抱えた黒猫は裸のまま寝具の上で転がり出した。
「政宗様・・・俺の耳はどうなってるんですか」
最初は興味がなさそうだった小十郎も、これだけ笑われればさすがに気になるだろう。
「色は白。柔らかいし、極上の触り心地だぜ?」
にやにやしながら頬に口付けた。
「Hey、小十郎、続き」
一通り笑い終えた政宗は、両手を広げて正面からこい、というよう訴える。
「・・・・・・」
「Ah?お前、何萎えさせてんだよ!」
見れば、小十郎の股間は先程までの怒張は見られず、半勃ちくらいに収まっていた。
「雰囲気を壊しておいて無茶言わないでいただきたい・・・」
呆れた顔の小十郎の首筋に無理矢理手を回して、顔の至る所ににたくさんの口付けをあびせる。
「So cuteだぜ、小十郎」
「・・・しばし宜しいですか」
うっとりした声で囁くと、小十郎は己の姿が見えぬ事に耐え切れなくなったようで、部屋の中にある姿見へ向かって立ち上がった。
そして鏡にうつった自分の頭から生える、白く長い耳を目の当たりにする。
「な・・・っこいつは・・・」
「Rabbitだな」
後をついていった政宗は、背後から肩に覆いかぶさった。
耳の毛は細く柔らかく内側はうっすらと桃色で、まさに白兎の耳。
小十郎は衝撃を受けて固まっていた。
その様子がまた可笑しくなって、くすくす笑いながら眦やら頬やらに口付ける。
「小十郎からこんなに愛らしい耳が生えるとはな!実は心のうちにはCuteな小十郎も居やがるのか?」
楽しくて仕方ないという政宗の態度。
自分の愛らしい姿はすっかり棚にあげている。
先程挿し入れた尾もそのままなので、本当に悪戯な黒猫になったかのようだった。
だが小十郎はもう一度鏡を見やると、くっ、と手で目を覆う。
「政宗様。願掛けも滞りなく終わりましたね」
「An?」
くるりと振り向いた小十郎はにこりと笑んで、自らの着崩れを素早く正した。
「では、もう夜も更けてまいりましたゆえ、小十郎はこれにて」
「Ha????」
寝具に散らかった羽織を頭に被せて、まさに脱兎の如く逃げた。
「ちょ、待ちやがれ小十郎!!!」
あとには、中途半端に身体が色づいてしまった裸の黒猫が、ぽつんと取り残されたのだった。