「小十郎・・・」

「梵天丸様!このような夜更けに如何なされましたか」


梵天は、寝付けずに随分床で寝返りを繰り返したようで、髪はぐしゃりとして着物もよれよれになっている。


「恐ろしくなってしまったのですな?」

「・・・ん」


自尊心の高い梵天丸だが、それを上回る程の恐怖に、羞恥など捨てて家臣の部屋へと押しかけてきたようだ。


言葉少なに近づくと、座している小十郎の首にしがみついた。


「仕方ありませんな。お父上様には内緒ですぞ」


普段ならば部屋までお送りして、寝付くまで側で布団の上から撫でてやるのだが、今日の怖がりようが尋常ではないので諦めた。


しがみつき震える梵天を抱えて歩けば、他の者が何事かと慌ててしまうだろう。

明日我に返って恥をかくのは梵天だ。


主をそのような目にあわせるわけにもいかない。


「それにしても、今日は随分と震えていらっしゃる。あそこに入ったのは初めてではないでしょうに」

「・・・今日時宗から怪談を聞いたんだ」


成程、聞いたばかりの恐ろしい話と今日の暗闇で、恐怖が膨れ上がってしまったのだろう。

ぼさぼさとしている髪を優しく梳きながら、小さい身体を抱きしめてやる。


「小十郎、どうにかしてくれ・・・恐ろしくて堪らない」


梵天丸の大きな左眼は、零れ落ちそうな程に盛り上がった涙の膜が張っている。


最近大人びてきた主に、心の底では不謹慎ながらも寂しく感じていた。

だから、嬉しさが滲み出てきてしまう。


「それでは、小十郎が何か話をお聞かせいたしましょうか」

「は、話はもういい!」

「恐ろしい話ではありませぬぞ?」

「んーーーーっ」


耳にぴたりと手をあてて首を左右にふり、溜めていた涙が何粒か空を舞った。


きっと何を聞いても、怖い方向に脳内変換されてしまうのだろう、小さい身体で精一杯の拒否。

さてどうしたものか・・・


「梵天丸様、そう強く押し当てては・・・」


爪で皮膚を傷つけてしまうのではないかと、指先が白くなっている部分を撫でさすった。


「・・・んっ」


その指が耳を掠めたようで、幼い梵天から甘い声が漏れた。


・・・

少しの間ののち、梵天は何かを閃いたかのように顔を上げる。

そしてにこりとして、梵天の身体を撫でろと命じたのた。





**********


梵天の着物を大きく割り開き、腕をとおしているだけの状態にする。


「さ、さむい、こじゅ」


羞恥に頬を染めて、今にも泣きそうな顔をしている。


だが胸の小さな桃色の飾りは、ピンと張りつめていた。


いつだったか、今日のように梵天にねだられて二度くらい肌に触れた事はあった。


勿論、子供の好奇心故の戯れで、くすぐったいような、気持ちの良いような感覚を楽しむだけのもので。

肝心なところに直接触れるような所までには至っていない。


だから、いつもと違い積極的な触り方をしてくる小十郎に戸惑っている空気を感じる。

可愛く主張している胸に、するりと触れた。


「や・・・」


身を捩った結果、着物が余計にはだけていった。


ぺろり、とゆっくりと舌を這わせると、甘い声が溢れる。

それがまた可愛らしくて、唾液をたっぷり含むように舐め上げ、円を描くように擦る。

びくんと身体を震わせ、ますます背を反らす様子は、もっと舐めるようにねだっているようにしかみえない。


「どうですか?恐ろしい気持ちは少し薄れて参りましたか?」

「ん・・・っあ・・・ま、まだ・・・」


意地悪に思い出させると、また少しだけ恐怖に顔を歪めた。


「それでは仕方ありません、もうしばらく・・・」


小十郎はもう片方に唇を寄せて、ししどに濡れた方は指で刺激をした。


「ひゃ・・・あっ」


片方の着物が肩から落ちたのを合図に、するりと手を回して、滑らかな背中も優しく撫でる。

手を腰の辺りまで下ろすと、完全に着物が床におちた。


「んっさむ・・・い」

「すぐ暖かくなりますよ」


顔を赤くして呼吸が浅くなっている様子をみると、もうさほど寒く感じてないだろう事がわかる。


尻や太腿にそっと触れると、いつもの梵天の身体ではない何かにつくりかえられたのではないかと思う程、すぐに快感を見出していた。


「あ、や、なんか変、おれ・・・」

「変ではありませぬ。小十郎が触れる事を喜んでくださっているのでしょう?」

「ん・・・っそうか・・・」


変な納得を示すと、潤んだ瞳で見詰めたままに唇を寄せてくる。


「梵天丸、様・・・」


口付けも、梵天の悪戯でほんの数回交わした事がある。

好奇心旺盛であるがゆえか、幼いながらもしばしばそういった行為を小十郎に求めるのだ。


そのたびに、自惚れてはならない、と己に言い聞かせながら対応しているのだ。


だが、この状況で笑い流せるような雰囲気ではなく、そろりと申し訳程度に唇を重ねた。


「ん・・・もっとこじゅ」

「・・・っ」


どうやら、幼い主を侮っていたようで。

今まで、子供の甘えたの延長で口付けをねだられていると思っていたのだが、今日のソレは明らかに違う。


自らが与えた快楽とはいえ、それに溺れ、もっと触れ合う事を求めている目だった。


ちゅ、と角度を変える度に部屋に響く口付けの音は、それだけでなにか淫らな気持ちにさせていく。


「ふ・・・っんん・・・」


少し息苦しそうになってきたところで、小さな唇を解放した。


「あ・・・駄目だ・・・こじゅ、もっとだ」


貪欲に求めてくる言葉に、クラリとしてしまう。




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