「・・・と、・・・お前何してやがる・・・!」
「寝るんだろ?部屋に連れて行ってやる」
「それは気まずいから離れる為の口実だろうが!」
「離れる?そんな事させるか」
「・・・!・・・」
担ぎ上げた肩の上でじたばたと暴れていた政宗が、急に大人しくなって、きゅ、と首にしがみついてきた。
本当に可愛い。
気性が荒かったり気まぐれだったりで痛い目をみる事もあるが、こういう甘えてくる時には心臓を止められるのではないかと本気で思う。
それほど、小十郎にとって可愛くて仕方のない存在になっていた。
今まで付き合ってきた女達からは、表情が乏しいとか、愛情を感じないとか散々言われてきた自分が、まさか十も下の青年相手にこんな変貌を遂げるとは誰に想像できただろう。
政宗をベッドに降ろすと、起き上がってこれないようにその身体に覆い被さった。
「まだひとつ気になってた事があるんだが・・・」
「なんだよ?」
言ってみろよ?と少し頬が紅潮したままの政宗は首を傾げている。
ふれない方が良いのかと思って放置した結果、今回は喧嘩になってしまったのだから、もやもやは早めに解決した方が良いのだと学習した。
「あの時お前が睨んできた事には気付いたんだ。でもあいつらが帰ったすぐ後は普通に見えたんだが」
「・・・そう振舞ってたんだよ。みっともねぇだろ。男が嫉妬なんて」
きゅ、と唇を引き結んで目をそらされた。
「だがその後の夕飯の時は不機嫌だっただろう?真田の他にも何か気にくわねぇ事があったか?」
「・・・ああ・・・悪ぃ」
「??」
政宗はバツが悪そうにしている。
「真田の事言い訳もしてこねぇくせに、機嫌だけとろうとしてるみたいに感じて嫌だったんだよ」
「料理したのがか?」
「ああ。それでせっかくの小十郎の手料理を素直に喜べなかった。本当ならすげぇ嬉しいはずなのに。
だから、なんで今そんなeventしやがるんだって腹立たしくてよ」
機嫌をとるつもりではなかったが、タイミングとしてそうとっても仕方がないだろう。
だが、いつも手料理を作ってくれている政宗に、自分も作ってやりたいと常々思ってはいたのだ。
「あーちきしょう・・・本当勿体無い事したぜ、全然味わって食えなかった」
心底残念そうな顔で呟く。
「じゃあ、また明日も俺が作る。イベントのやり直しだ。それで許してくれるか?」
「・・・No、明日は俺が作る」
「政宗・・・それじゃあ意味がないじゃねぇか・・・」
「いいんだ!・・・もっとこう、とっておきの気分の時とか、ごくたまにでいい。
普段は俺がお前に作ってやりてぇんだから」
作ってあげたい、という気持ちは小十郎も同じだったが、特別料理好きな政宗にそこは譲る事にした。
早くそのイベントがきて欲しいとも思うが、やはり手料理を食べるのも幸せだから。
「Shit・・・女みてえで情けねぇ」
一通りお互いのわだかまりがとけたが、政宗は全て打ち明けた事を後悔しているようだった。
「俺は・・・お前が全部話してくれて嬉しかったぞ?・・・それがわかったから今度から俺もきちんと話す」
「ん・・・」
照れくさそうに視線から逃れるようにして、小十郎の首にしがみついてくる。
可愛い子は甘やかしたり、いじめたりもしたくなってしまうもので。
少し赤い耳元に唇を寄せた。
「ずっと離さないから、な」
「!!」
先程過剰に反応した言葉。
政宗にとって大切な言葉なのだろう。
好きや愛してるより、もしかしたら心に響くのだろうか。
大切に想いをこめるように囁いた。
「痛ぅっ」
「調子のんな!!!」
頬にガリと爪をたてられる。
どうしてお前はここぞという時にそうなんだ・・・と溜息をついた。
今日は生傷が絶えない。
けれど、政宗にいつの間にか耳と尾が現れていた。
そして少し落ち着いた頃に、すまなそうに頬もペロリと舐めてくるから、そんな所も愛おしく思えてしまうのだった。