結局あの後、小十郎と佐助もバスケット対決に参加させられて、公園に居るには年齢層の高い四人組は、夕方まで身体を動かした。
「いやーさすがに若い二人には敵わないねぇ」
肩をまわすようにして筋肉をほぐす佐助に、政宗がすかさず答える。
「とか言って随分動き速かったじゃねぇか」
政宗と小十郎、佐助と幸村でチームを組んでの対抗戦となったのだが、片方が勝ったかと思えば、次はもう片方が勝つといった、ほぼ互角の勝負だった。
「いやいや、俺なんかより、片倉センセが年の割にいい動きだったんじゃない?」
「はい!某も片倉先生の動きには感服いたしましたっ」
「褒めてもなにもでねぇぞ」
小十郎は、佐助と幸村の賞賛に顔色ひとつ変えずに返答している。
実際、四人とも運動神経の良い人間の集まりだったようで、相当レベルの高い戦いになった。
皆いつの間にか夢中になり、揃って汗だくである。
このままではさすがに気持ちが悪いだろうと、またもと来た道を戻り、小十郎のマンションに向かっていた。
シャワーを四人で順番に使うのは効率も良くないし、近くの銭湯に行けば良かったのだが、その提案が出そうになるのを遮って「うちに来い」と言ったのは小十郎だった。
ちらり、と盗み見る政宗の右目。
小十郎といる時でも、風呂や眠る時以外は眼帯を付けたまま生活をしている。
恐らく、政宗にとってコンプレックスである事は確かだ。
銭湯では眼帯を外さざるをえないだろうから、それで政宗に嫌な思いをさせるのではないかと心配だったのである。
小十郎は風呂に一緒に入った事もあるし、眠るベッドは同じなのだから、短い間ながらも何度もその眼帯の下を見ている。
それは自分に特別許された事だと思いたいという独占欲もなかったとは言い切れないのだが。
「なあ、小十郎」
帰路の途中、政宗が声をかけてきた。
「どうした?」
わざと銭湯を避けたことがバレたか、と一瞬どきりとしたが、政宗は少年のように目を輝かせて見上げてくる。
「小十郎、お前バスケ得意なんだな!」
「ん?・・・ああ、別にバスケが特別得意ってことはねぇが・・・」
「ああ、運動全般得意なんだろ?」
動きみてりゃあわかる、と上機嫌で言われた。
「まあ、そうだな。運動は得意な方だな」
「意外だったぜ。まあ運動が苦手だったらもっと意外だけどよ。あんなに身体動かせると思ってなかった」
「年寄り扱いするな、まだ三十にはなってないぞ」
「へへ、それでも十は違うんだ、多少年寄り扱いしちまうぜ」
悪戯に笑う顔はあどけなくて、普段より幼くみえる。
「あんなに動けるなら、体育の先公でも務まりそうだな」
「勘弁してくれ。柄じゃねえぞ」
「っ!確かにその通りだな!!」
政宗はさも面白そうにカラカラと笑った。