だが、そうそう思い通りにはいかなくて。

ひとり布団にくるまれ、小十郎は枕元で正座をはじめたのだ。


「こじゅ・・・一緒に寝るんじゃねえのか・・・?」

「寝るわけないでしょう」

「・・・・・・なんで」


「だいたいこのような所でお眠りになる事もあってはならない事だというのに、共に眠るなど・・・」

「この布団がいいんだ。それに俺が一緒に寝ていいって言ってる」


はあ、と溜息をつくが、小言はそこで言うのをやめたようだ。


「とにかく、今宵はもう眠ってください」

「・・・はあっ?」


これでは意味がない。


寝たふりをして、小十郎の寝顔を見ようと思ったのだ。

ここまできたら、意地でも見たいではないか。


本日2回目の策略的なおねだりを決行した。


「なあ、頼む。今日だけでいいから一緒にねむろ」

「ちょ、梵天丸様?!」


布団を背負ったまま小十郎の懐に飛び込んで膝の上にのっかる。


小十郎を無理矢理布団にくるんで、二人みのむしのような状態になった。

ぴっとりと抱きついていると、心の音が聞こえて安心する。


「本当に、今日の貴方様は甘えたでいらっしゃる・・・」


そんな呆れ声にも屈しねぇえと心で叫んだまま、無言で首元に頬を摺り寄せる。


そこまでされたら、頑なな小十郎も些か甘えたな雰囲気にのまれてくれたようで、とうとう観念した。


「わかりました。本当に今宵限りですぞ。もう添い寝が必要なお年ではないのですからね」

「おーけい!!」


妙に元気良く返事してしまって、真意がばれやしないかと一瞬ひやひやしたが、そのまま布団に横たわらせられた。


「お休みなさいませ」

「お、おう!おやすみ」



ぎりぎりまで渋っていた割りに、一度共に布団に入ると苦しくない程度に抱きしめられて、優しく背中をさすられた。


「ん・・・それきもちいいー・・・眠くなっちまう・・・」


「・・・眠くなっていただかないと困ります」


さすさす・・・と規則正しい手に、このままでは瞬きの間にすら眠りに落ちてしまいそうだ




―――駄目だ、ここまできて先に眠るわけには・・・!


「んーーー・・・」


閉じてくる瞼に必死に力をいれて、手足をもぞもぞとさせる。


「やはり今宵は寝苦しいのですか?」


眠くて仕方がないのを、寝れなくて暴れているのと勘違いした小十郎は、くい、と軽い力で引き寄せ、自らの胸の上に梵天の身体を引き上げた。


「ぅわ」

「うつ伏せの方がお好きでしょう?」


その体勢で背中をさすられ、頭を優しく梳かれて、もう梵天は眠気に抗える気がしなかった。


低く響く心音が頭に優しく響く。

少しだけ音が早い気もするけど、小十郎はまだ眠くないのかな・・・そう思いながら、ひっぱられていくように意識が遠のいていった。




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