「んむ・・・」
微かに鳥の鳴き声が聞こえて目をこすると、辺りはもう明るかった。
―――・・・っっ!!!しまった!!
やはり、寝てしまった。
小十郎が眠るまで起きているなど、最初から無理な話だったのだ。
ほんとに、眠たくなっちまうんだよ、小十郎といると・・・と身体を動かすと、自分の下にいるのは布団ではなくて小十郎だった。
「!!」
ばっと顔を上げると、そこには瞳を閉じて、規則正しい寝息をたてる小十郎がいた。
「寝て・・・る」
昨日はいつ眠ったのだろうか。
旅の疲れに寝不足にと、だいぶ無理をさせてしまったようだ。
身体の上で寝ていた梵天が起きた事にも気付かない程に寝入っている。
そのままあまり身じろぎしないように気をつけて顔だけを起こして観察する。
精悍な顔立ち。
男らしい骨格で表情も穏やかな方ではないから一見分かりづらいが、とても整った顔をしている。
―――そんなことは、俺は前から知ってるけどよ。
思わずにやけてしまう。
自分が小十郎の事を一番良く知っている、と思うと、なんともしれない優越感を感じた。
それにしてもこいつは寝てる時も眉間に皺、寄せて・・・
そう考えてふと我に返った。
―――なんだよ、笑ってねぇ
先程までの上機嫌がふと曇った。
そう、当初の目的は寝顔が笑ってるかを見に来たのだった。
幸せならば、或いは。
そう思っていたのに、目の前の顔はどちらかというと険しい顔。
重いのか?
そう考えて居心地が良かった小十郎の身体から、名残惜しくも降りてみた。
そのまま横に寝転び顔を覗きこむが、眉間の皺は濃くなった気がする。
暑いのか?
今度は密着した身体から少し距離をあけてみた。
「ぼ・・・て、まる・・・さま」
「ん、起きちまったのか?」
だがそれは寝言だったようで。
ただ表情は一層険しい。
人の夢見ながらそんな顔をするのか、と腹立たしいを通り越して悲しくなってきた。
貴重な小十郎の寝顔だったけれど、今日は悲しいばっかりだから、もういいや、と思う。
そのまま身体を起こして背を向けて立ち上がろうとした。
だがその時ふわりと身体が引っ張られたかと思うと、小十郎の腕の中にいた。
「あ、あれ?」
背中から聞こえるのは穏やかな寝息で。
「こじゅ・・・ねぼけて・・・っ」
「こちらに・・・いました、か・・・」
ふわり、と微笑んだ気配がした。
「え、ちょ、おまえ、ずりぃ・・・」
背中から抱きしめられている状態で表情を見る事はできなくて。
でもたった今決定的瞬間を逃したのは疑いようもない事実。
「あーもう、起きろっっばかこじゅーー!!」