5.
「んんっっ」
「梵天丸様・・・」
「こじゅ、嫌、だ。 触るなって言ったのに・・・!」
「触れなければお教えできないではないですか。それともご自身で触れますか?」
「ばかっそんな事・・・!っっ・・・んんんっっ」
小十郎は梵天の下帯だけを取り払い、直にその幼い性器を揉んでいた。
「や、やめ・・・っ変な感じするっ」
「どのような感じですか?」
「ちから、がっ入らない、みたいな、入る、みたい、なっ」
可愛らしい痴態に、思わず微笑んでしまった。
「本当にお可愛らしい・・・」
「っ!う、るせ、変な事言うなぁ」
途端に梵天の欲望がひくりと動いて、目を丸くした。
「・・・小十郎の言葉に、感じてしまわれたのか?」
「・・・っっも、もうお前黙れっっ」
目の端に涙を溜めながら、もう座っていられないようで、小十郎の肩口に額を寄せてきた。
小十郎は梵天の脇の下に手を差し入れ、小さな身体を反転させると、自らの膝の上に座らせ、その背中を支えてやる。
「うわ、あっ」
すると、小十郎の欲望が尻に触れたのだろう、驚いた声をあげる。
「!失礼しました」
小十郎は慌てて少しだけ梵天の身体を前にずらそうとする。
「ん、いい。触ると気持ちいいのはよくわかったから」
「?」
そのまま腹の方に座るように身体をずらしてきて、自分の股の間から小十郎自身に再び触れてきたのだ。
「梵天丸様・・・!お戯れはお止めください」
「最初から言ってるだろ? お前を気持ち良くさせてやりたいから、し始めたことだしよ」
振り向いて小さな前歯をのぞかせて可愛く笑う。
「・・・っ・・・でしたら、共に触れましょう」
小十郎は、横から自身がはみ出してしまい、もはや意味をなしていなかった下帯を外した。
すると、自分と梵天丸の陰茎を重ね合わせて、両手の平で二つをすっぽり握りこんでしまう。
すると、新たな興奮を得たのか、梵天の身体が跳ねる。
「んん・・・っんあ・・・っっ」
二人分の先走りで、滑りがよくぬめりを帯びた行為は、室内に厭らしい音を響かせる。
「あ、うっ」
「梵天丸様・・・先程は何故、小十郎が触れてはいけないと・・・おっしゃったのですか?」
熱にうかされた今なら本音を聞けるかもしれないと思い、耳元で囁いてみる。
「ふ・・・っ、こじゅ、ろには、恥ずかしいから、いや、だったんだ、よ」
「小十郎だと、恥ずかしいのですか?」
鈴口に円を描くように撫で回してやる。
「ん、・・・っ」
「それは・・・何故に?」
いやいやをするように小さく首を振って、執拗に擦ってくる小十郎の手を止めようと掴んでくる。
「わかんねぇ、よ・・・っ も、耳のとこで、はな、すなっ!」
「ですが今は触れられて、ここは喜んでいらっしゃる」
「ば、言う、なっ」
小さな昂りは吐き出す先を探してびくびくと震えていた。
愛おしい・・・
「梵天丸様・・・・・・愛しております」
「・・・っっ!!!!!!・・・あ、・・・ん、んんっっっ」
腕の中の愛しい主は、愛の言の葉で白濁を飛ばした。
そのあまりの可愛らしさに、思いがけず自らも達してしまった。
「・・・っ」
「わ・・・すげぇ・・・こじゅうろうの・・・」
自分の吐き出した欲との量の違いに、目を丸くしてはしゃぎ始めた。
だが、まだ息が弾んでいる。
「こじゅ、気持ちいいな、これ」
無邪気すぎる様子に、今更ながら全身に罪悪感がのしかかった気がする。
「なあ、さっきのお前の言ってた理論からするとさ、こうやってたまに出してれば、朝に勝手にでるのを防げるんじゃねーのか?」
「は?・・・ええ、まあ、そうなりますね。理論的には」
頭の働く主は、ニタリと笑ってみせる。
「じゃあ、問題ねーだろ!俺の為にしたんだからよ。勝手に自分だけ悪者になってんじゃねぇぞ」
「・・・え」
「これは、同罪、なんだからな!」
まだまだ幼いと思っていたのに、小十郎の心の内などお見通しとは。
「梵天丸様はお優しいですな」
少し汗で張り付いていた髪を優しく梳いてやると、気持ち良さそうに目を瞑る。
「あ!でもあれは反則だぞ!」
「? 反則とは?」
「最後の」
「最後?」
なんの事だろうか。
思い当たる節が多すぎて逆に検討がつかない。
「アイシテルってやつ」
「え・・・あっ!」
声に出ていたのか!
とんでもない告白をしてしまった事に気付かされる。
「あれ、一番キいたから」
「・・・きいた?・・・あ、あのその事はどうかお忘れ・・・」
「あれが一番気持ちよかったんだよ・・・っ」
「・・・は、い?」
あーいうのも、“睦みあい”の時に、するもんなんだな? なんて、梵天は一人納得顔で頷いていた。
どうやら、性行為の愛撫の一種だと勘違いしているようで。
そういえば、言葉に敏感に反応をして快楽を感じていたようだった。
誤魔化せた事に胸をなでおろすべきか、間違った解釈を訂正すべきかと悩む。
だが・・・もうしばらくはこのままでもいいかもしれない。
愛を囁く事に許しを得たような気がして嬉しく思うから。
それが気持ちよかったなんて屈託ない笑顔で言ってくれるから。
本当の気持ちはもうしばらく、おあずけにしておこう、と小十郎は思ったのだった。