すると、ちゅ、と甘くて暖かい物が口の中に入ってきた。


「む、んん」


小十郎の舌だとわかって、顔が熱をもっていくのがわかる。


「頬ずりより、こっちの方が喜んでくださるって事です」

「・・・っ 今、すんな、阿呆」


不意打ちの口付けに、初心な反応をしてしまった。


「すみません、あんまり政宗様がお可愛らしくて・・・理性がすぐきかなくなっちまって」

「!な、お前なに言って」

「同じ物を食べてくださった事に舞い上がっちまうし、簪つけてる時のご様子も・・・」

「!」


同じ理由で小十郎が自分を意識していたとわかって、ますます顔が熱くなってきた。


「それに、こんな表情されると・・・」

「ん・・・っ!」


咄嗟に顔を隠そうとしたら両腕を掴まれて、深く口付けられる。


舐めた飴のせいで十分舌が甘いというのに、互いの舌を絡めると更に甘みが強まるようだ。


「は、あ・・・こ、じゅうろ」


掴まれた腕から逃れると、すぐに自ら首に絡み付いてもっと深くと舌を絡ませあう。


「政宗様、これ以上はご勘弁を」

「ん・・・ぁ」


ぐいと引き剥がされて、思わずむっとする。


「お前からしてきたくせに随分勝手じゃねぇか!」

「先程も申したように、政宗様に小十郎の理性はほとんどきかないのです。こんなところで罰当たりな事はできませんからね」


珍しく自分の弱みをみせるような事を口にして、どうかご容赦下さいと苦笑いをされた。

そしてすぐに、背中におぶさるようにと両腕を引っ張られて軽々と持ち上げられる。


「ったく・・・お前は俺の女装に弱いんじゃないのか?」

「まさか。お可愛らしいとは思いますが、常々申しておりますように、そのままの貴方様が一番でございます」

「・・・ふん」


仕方なく小十郎の身体に足を絡ませてしがみつく。


「おや。政宗様も前が腫れておりますな。帰って処理なさいますか?」


笑いを堪えるように言う小十郎の背中が振動していて、腹立たしくなって頭に噛み付いた。


「痛・・・政宗様!」

「ふん!誰のせいだ、このむっつりが!」


憎まれ口を叩きながらも、首にしがみつくようして肩口に顔を埋めた。


甘えた雰囲気が伝わってしまったのか、片手で頭を撫でられる。


「早くお城に帰りましょう。影の者もしょっちゅう代役を命じられては寿命が縮まりますぞ」

「うるせー・・・」


答えながらも、小十郎の暖かい背にくっついているとひどく落ち着いてしまい、眠気が押し寄せてきた。


本当は昂ってしまった腹いせに、おぶられながら小十郎の首やら耳やらに悪戯をして愉しもうと思っていたのだが、瞼が段々重たくなってしまう。


「眠っていてもいいですよ」

「寝ねぇ・・・」

「ふ。お休みなさいませ・・・政宗様、・・・今日は有難うございました」


意識が遠のきながらも、小十郎の声が頭に響く。


有難う?

また城に帰ったら小言を言われて二度とするなと延々怒られると思っていたのに。


何故だか、幸せそうな声で礼を言われた気がした。


俺も幸せだぜ、と寝言を呟きながら夢でも小十郎と祭りを愉しんでいた。

二人きりで祭りに行って、周りを気にする事なく恋人として過ごす事ができるなんて、一生の思い出だ、と感じたのだった。





**********


「貴方様は!殿である自覚をもっておいでか!!?」

「・・・・・・Ah?」


慣れない事をして気疲れをしたせいか、結局あの後小十郎の背中で眠りこけて、城についてすぐ床に就かされた。


そして朝を迎えたわけなのだが、小十郎の説教を延々と聞かされている。


「二度とあのような変装はしないと約束しておいたでしょう?そもそも共もつけずに城下に行く事自体問題だってのに女装なうえに丸腰では、いざという時に」

「お前・・・昨日さあ・・・」


耐え切れずに小十郎の言葉を遮る。


「なんです?」

「今日は有難う、みたいなお礼、言ってなかったか?」

「知りませぬ」

「Ha〜?!嘘言ってんじゃねぇよ!!」

「何のことやら」

「お前だって浮かれてたんじゃねえのかよっ!昨日、その、俺と祭りとか行ってよう?」

「小十郎にはさっぱり」


「〜〜〜〜っ??!」


小十郎の呆け老人!!!と悔しさに顔を真っ赤にして部屋を飛び出した。

ちらりと見えた小十郎の顔が少しだけ笑っていた気もするが、何度言おうとも同じ返答しか返ってこない事はわかっている。


たった一日の恋人ごっこが幸せすぎた為に、わかっていてもやりきれないのだ。


また怒られても、いつかまたやってやる・・・!と心に誓う政宗であった。




□■戻■□


リクエスト→月城絖璃サマへ

姫のひめゴト。の続編「城下デート」のリクエスト頂きました☆有難うございます!!
女装ネタの反応がどうなのかとびくびくしておりますが><
少しでも楽しんでいただけたら幸いです!
やはり城下デート定番のお祭り!というコトであまりひねりがなない感じですが、
絵の方でも筆頭に林檎飴を食べさせてたので、そのネタをやりたいな!と
りんごキッスです(笑
林檎飴、当時もあったのでしょうか。謎だけど書いちゃいました♪〜(゚ε゚;)
神社の子のこじゅに境内で悪さ(?)させるのはどうなのかなあと思いつつ
中途半端に悪ささせてみました。
月城絖璃サマのみお持帰り可でお願いします☆