4.OMAKE



小十郎は意外にも落ち着いていた。

この手に政宗を抱きしめたら、それこそ動物のように理性が跡形もなく崩れるだろうと思っていたのだ。


けれど、年甲斐もなく心が通じ合ったことだけで満足して、今すぐどうにかしてしまいたいという衝動は、自分の腹の中に飲み込んでしまえた。

ひたすらぎゅうぎゅうと政宗を抱きしめる。


そんな純愛におちた小十郎に水をさすのは、当然政宗なのだ。


「俺、本当は今日、小十郎を襲ってやろうと思ってたんだ」

「はっ?!!」


「待ってても何もしてくれないから、俺がするしかねえって思ってよ」

「・・・・・・そんな事、まさか経験があるんですか?」


冷や汗をかきながら問えば。


「ないけど・・・小十郎を興奮させて勃たせたら、教えてくれるだろって思って」

「それでいろいろ誘惑してきたんですね・・・着崩れやら寝顔やら」


げんなりした顔の小十郎を見て、慌てて弁明してくる。


「ち、違う。着崩れはわざとだが、寝ちまったのは失敗。・・・まあ結果オーライだけどな」


悪巧みというかなんというか、可愛らしくも凶悪な罠にまんまと嵌ってしまったわけだ。



「で?閨事はするのか?」


胡坐を跨ぐようにして首に抱きついてくる政宗の額を思わずベチリと叩いた。


「い・・・っっってえぇえ」

「ご自重くださいませ」


「あ?自重すんのはお前だ!!今までの流れでなんでそうなるんだよ?空気よめ!!」


この馬鹿力!!!とか、なす!!!!とか、

なにやら喚いているが、可愛い憎まれ口にしか聞こえないから困ったものだ。


恋仲になり余計に政宗を可愛く思ったりしての事なら、我ながら今後が思いやられる。


ふ、と耳元に息を吹きかけて舌でなぞりあげると、ヒッという短い悲鳴と共に、信じられないものをみるような目つきで見てくる政宗に、


「まだお早いようですな」


しれっと言い放ち、薄っぺらい身体を横抱きに持ち上げると、途端に顔を赤くして暴れだした。


「降ろせ!!!たこ!!!!」

「た・・・こ・・・・・・」


憎まれ口を叩いて平静を保とうとしている事はあきらかで、タコのように赤くなっているのは政宗の方だった。


そっと奥の部屋の布団に身体をおろしてやると、心なしか不安げな顔。


眼帯に手をかけてそっとはずしてやる。

すると、抱かれると勘違いをしたのか意を決したように見上げてきて、余りの健気さに思わず吹き出してしまう。


「な・・・!おま、からかって・・・っ!」


隠されていた右目の瞼にそっと口付ける。

宝物に触れるように。


「あまり我慢がきかなそうなんで・・・早く大人になってくださいよ」


そう伝えてから、おやすみなさいませ、と奥の部屋の襖を閉めた。


「エロじじい!!!!!」


ほどなくそんな暴言と、枕でも投げたのであろうガゴッと何かが襖にぶつかる音。


―――全く。してほしいんですか、してほしくないんですか?


そんな事、聞かなくともわかっているけれど。


―――しばし、貴方様の心の準備ができるまで待って差し上げます


毎回こんなになるのはちと辛いが、と自分の帯の下辺りを見詰めて苦笑いをした。




□■戻■□


リクエスト→とみサマへ

無意識伝心の二人がくっつく話リクエスト、有難うございました!
精神的な意味でくっつくにしてみました☆
結果的に続篇つくることでタイトルの意味が広げられたので良かったです^−^
題名ひねりがなくすみません(笑
「むいしきでんしん・かなう」です。
お楽しみ頂けたら幸いです。
とみサマのみこんな小説で良ければお持帰りくださいませ。